完璧ではないからこそ、生まれる風合い - Herringbone × Dobby weave knit pullover -
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完璧ではないからこそ、生まれる風合い

服づくりをしていると、効率や均一さが求められる場面によく出会います。
同じものを、早く、美しく、正確に。
それは決して悪いことではありません。
けれど私たちが惹かれるのは、ときどき、その反対側にあるものです。
少しだけ不均一で、人の手の痕跡が残っていて、どこか温かさを感じるもの。
今回のプルオーバーは、そんなものづくりから生まれました。


この生地は尾州で製作したjeshオリジナル生地です。
尾州は愛知県西部から岐阜県南西部にかけて広がる、日本有数の毛織物産地。
世界的なメゾンからも高い評価を受ける、日本のものづくりを支える産地のひとつです。
今回私たちが目指したのは、織物でありながら、まるでニットのような柔らかさと膨らみを持つ生地でした。


その生地を織ってくださったのが、尾州で長年機屋を営む井上さん。
今年80歳になる職人です。
実は、この生地に使用しているような太い糸を扱いながら、美しく織り上げることができる工場は、今ではごくわずか。
生地づくりの過程で、「これができるのは井上さんだからだね」と何度も耳にしました。
同じ機械を使っても、同じ生地はできない。
糸の状態を見ながら、音を聞きながら、少しずつ調整する。
長年積み重ねられた感覚と経験があるからこそ生まれる風合いがあります。
この生地は、旧式のションヘル織機で織られています。
現在主流となっている高速織機に比べると、生産効率は決して高くありません。
けれど、その“遅さ”こそが、この生地の魅力を生み出しています。
ションヘル織機は糸に強い負荷をかけず、ゆっくりと時間をかけて織り上げることができます。
そのため糸本来の膨らみが損なわれず、生地の中に空気を含んだような柔らかな風合いが生まれます。
高速織機では表現しづらい、どこか人の温度を感じるような質感。
古い織機だから良いのではなく、その織機を扱う職人の技術があるからこそ生まれる風合いです。

ゆっくりと織り上げられた生地は、わずかな揺らぎや豊かな表情を持っています。
均一で整った美しさとは少し違う、人の手仕事に通じるような奥行き。
効率だけでは生まれない豊かさが、この生地には宿っています。
織り上がった後には、さらにクリアー仕上げを施しています。
生地表面を丁寧に整えながら、ふっくらとした膨らみを引き出す工程です。
その結果、織物でありながらニットのような柔らかさを持つ独特な風合いに仕上がりました。
触れた瞬間に感じる軽さと空気感。
それは数字では表せない、この生地ならではの魅力です。

実際に袖を通してみると、まず感じるのは軽さです。
一般的なニットは糸をループ状に編み立てて作られますが、この生地は経糸と緯糸で構成された織物。
見た目にはニットのような温かみを持ちながら、軽やかな着心地に仕上がっています。
リブ部分は染めた同じ糸でニッターさんに編んでいただいた手編みです。
肩の力を抜いて着られるのに、どこか品よく見える。
日常に自然と寄り添いながら、装いに静かな存在感を添えてくれる一着です。

私たちが服づくりで大切にしたいと思っているのは、高揚感です。
少しの揺らぎや不均一さの中に宿る、人の手の気配。
時間をかけて作られたものだけが持つ豊かさ。
このプルオーバーにも、その背景が静かに息づいています。
服そのものだけでなく、その奥にあるものづくりの時間まで感じていただけたら嬉しいです。
なお、このオリジナル生地は限られた環境と技術の中で生産しているため、大量生産ができるものではありません。
その希少性も含めて、長く大切に着ていただける一着になれば幸いです。
※風合いを長く保つため、お手入れはドライクリーニングをおすすめしております。
✴︎ご予約はこちら《6/14(日)23:59まで》